買ってしまった夢(2−1)・・・創作(他小説投稿サイトに公開済)

昨年の11月も末だった。草野洋平はくさっていた。一応は10人いた部下が2人突然前触れ無く辞めてしまい、部下は8人になってしまい。
会社からは増員する余裕はないので、その人数のままで頑張るようにと通達されていた。
退職したい場合は、1ヵ月前には申告しなければならないと決まっているのだ。
あの2人は常につるんでいた、計画的な事だろう!
彼ら2人がいなくなり、残業続きだ。戦力だった2人だった。どこか待遇の良い会社に移ったのだろう!洋平は、ただ、ただ、
疲れ果てていた。
草野洋平53歳。
50歳の誕生日に、妻は離婚届けをリビングのテーブルにおいて、出て行った。
高校1年の娘を連れて。
マンションは、それ以来娘が使っていた部屋と妻が使っていた部屋は空き部屋のままになっている。
馬鹿にしやがって!なんのつもりなんだ!
どいつもこいつも、常識ってものが欠如してる!
俺を馬鹿にしやがって!!
洋平は、怒りを吐き出す術もなく、月曜から金曜は職場に通い続けた。
そんなある日、
仕事帰りに、渋谷のパルコに寄り、靴がくたびれてきていたので、靴を買った。
黒の革靴。就職してから職場には、黒の革靴ばかりだった。若い連中はビジネススーツだったとしても、靴の色は様々だったが、洋平は黒より履いたことはない。
紙袋とノートパソコンが入っている黒いバッグを下げて、スペイン坂をとぼとぼ歩いていると、ロボットの女性に呼び止められた。
「旦那さま! お疲れ様です。
夢を買いませんか?
幸せになれますよ! ラッキーになれますよ!
ハッピーになれますよ!」
洋平は八頭身美人のロボットに、
「いくらだ?!」と問うと、
「千円です。千円で素敵な夢を買って下さい!」
靴に比べたら安いものだと、洋平は夢を買った。
財布から千円冊を1枚出して、ロボットに渡すと、ロボットは胸に手を入れて、1通の封筒を出して、
「はい! ありがとうございました。お幸せに!」
洋平は白い封筒を坂道の端に寄り、封を手で開けて、中に入っていた厚手のカードのような紙を引き出して、読んでみた。
「あなたはケチですね。
あなたは真面目です。あなたは一生懸命に働いてきました。真面目に真面目に。
あなたの欠点はケチなことです。
あなたは、細かい枝の先は見えますが、森全体を見る能力はありません。
あなたの欠点はケチなことです。
お子さんも離れましたね。
奥様も離れましたね。
あなたの仕事仲間も離れましたね。
あなたは兄弟姉妹はいませんね。
あなたのご両親は他界されてますね。
あなたの欠点はケチなことです。
幸せになるためには、
明日の朝見た夢に従って1日を過ごしてみて下さい!
あなたはまもなく幸せになります。」
振り返って見たが、美人のロボットは消えていた。
半分はぞっとしていた。書いてあったことは当たっていたから。
欠点のケチも当たっていた。ケチにするしかないではないか。
結婚して娘が生まれ、マンションのローンに、娘の教育費、妻は小さくても車は必要だと言って、車のローン、妻の父親が亡くなり、墓を都内に建てたいと言い張り、墓のローン、次々と月々の支払いが増えるばかりだったのだ。
ケチが悪いのか?
ケチの何が悪い?
人様に迷惑かけるでもないのだ。
俺は呑み歩いたこともない、旅に出たこともないのだ。
3年前に妻と娘が去り、しかし、車やマンションや教育や墓のローンは残ったままで、払い続けているのだ。
娘の養育費を送る義務は昨年で終わった。
養育費を元妻の口座に振り込むと、必ず、振り込んだの一言を妻のスマホにSMSで送信していた。しかし、娘が高校を卒業した3月、最後の養育費を送った、その日にはSMSに返信が初めてきて、
「受け取りました。これで私も娘も、あなたとの縁は完全に切れました。このスマホも、解約しますので、今後連絡はとれません。」
それで全て終わった。とんでもない女だった。
奪うだけ奪い、そうだ、2年毎に新車に買い替えさせられていた車は妻の名義にしていて、ローンの支払いだけは俺の口座からの引き落としだったが、
妻は家を出る時に、車も持っていった。
俺はあれこれ詮索もしなかった。妻に対して興味は失せていたから。娘についても、小学生の5年生になった頃から満足に話したこともなかった。
俺の人生はなんだったのか。
ハッピー?ラッキー?そんな思いを感じた瞬間もない。
封筒に厚手の紙を入れて、黒の革鞄にしまうと、洋平はいつもの夜遅くまで営業している、全般に安いスーパーに寄り、賞味期限が今夜11時までで、半額にして売っている弁当を買って、とぼとぼとマンションに帰った。
夢か、夢などみたこともないなあ!みていたのかもしれないが、夢など、思い返したこともない。
洋平は、奇妙な感覚に囚われている自分が可笑しかった。
明日の朝、どんな夢をみたのか、よく思い出して、その通りに行動したならば、ハッピーになる、ラッキーになる。
あれだけ自分のことを当てていたのだから、あの美人ロボットは恐るべしだ。
今夜は、早々に寝ることにしよう!
と、電子レンジで弁当を温め、ケトルに水を急須分ほどを入れて湯を沸かし、番茶を淹れて、
モクモクと食べ、テレビをつけて、ニュースを観る。
バスルームに行き、湯船に半分だけ湯をいれて、
風呂に入る。
洗濯は週に2回と決めていて、その夜は洗濯日ではない。
風呂からあがり、スマホをチェックし、パソコンをチェックし、急ぐ用もなく、またテレビを観ようとして、興味ある番組もなく、スイッチを切った。
真面目な洋平は、どんな夢をみるのかが気になって仕方なかった。
まだ眠くはないが、まずはベッドに入ろうと、ベッドに入ったのは、10時40分。
まもなく寝入った洋平ですが。
(続く)
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