okamehachimokuのブログ

日々の日記と創作

買ってしまった夢(2−2)・・・創作(他小説投稿サイトに公開済)

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ぐっすり眠り、清々しい気分で目覚めた洋平は、

ベッドに起き上がり、さて、夢だ、どんな夢だったかと目をつむり、そうだ、そうだ、非常に爽やかで嬉しい気分が高揚する夢だった。


買った夢の紙に書いてあったのは、みた夢と同じ行動をせよ!ということだった。


真面目な洋平は、その日が土曜日であることに感謝して、ベッドサイドテーブルに置いてあるスマホを手にして、メモアプリに、忘れてはならないと、みた夢の中の自分の行動を書き込む。


思い出す限り、細かく丁寧に。


そして、まず、少し室内はヒンヤリしているが、寝室とリビングの窓を全開にして空気の入れ替え。

その間に、歯磨き、洗顔、髭剃り、キッチンに行き、冷凍してある角食を出して、ヤカンに水を入れて、インスタントコーヒー用の湯を沸かす。


ここまでは、いつもの自分と同じだった。


ベランダの隅に放置されたままの植木鉢3個をビニールの袋にいれて、

燃やせないゴミに出すために、マンション地下に持っていくために、玄関におく。


外はかなり寒い。開けていた窓を全部閉めて。


トースターを温めて、角食にうすくマヨネーズを塗り、納豆に付いているタレを半分入れて、よく練る。それをパンにのせて、スライスチーズをのせて、トースターへ。


実家から貰って、すでに所々塗りがはげている、トレーに、紙パックの小さな無塩の野菜ジュース、インスタントコーヒー、キッチンペーパーに納豆チーズトーストをのせて、

キッチンにある小さなテーブルで、ゆっくり食べる。



妻が出て行ってから、ずっと朝は、この食べ方をしている。洗い物を極力少なくして、調理する手間を省く。


ケチかもしれないが、質素な生活のせいか、無病息災である。


マグカップを洗い、キッチンペーパーでよく拭いて、カップボードに納める。


そうしながら、あの植木鉢に何を植えていたのかさえ、洋平は知らず、家の中について自分は無関心だったのだとつくづく思ってしまった。


洋平は、パジャマを脱いで着替える。明治神宮に行かなければならない。

ラフなスタイルで、スマホとハンカチ、財布をズボンや薄手のパーカージャケットのポケットに入れると、捨てる鉢を持ち地下室のゴミスデーションに置き、

揚々として、明治神宮に向かう。

住んでいるマンションは、地下にゴミスデーションがあり、曜日を待たずに部屋から出しておける。

新聞紙やダンボールなどの廃品も、置くスペースがあり、洋平とすると妻といずれは共稼ぎになるとして、ゴミ処理の便利さが、マンション選びの重要な要素だったが、元妻は一度たりとも、アルバイトすらしたことなく、一体家の中で何をしていたのかと、出て行ってから思った事だった。



夢では、参拝が終わった後、境内で広島常務に偶然会う。

そんなことあるのかな。洋平は無趣味だけれど、都内、また埼玉や千葉の寺社仏閣巡りを休みの日は、この3年続けている。


常務は管財の部長である洋平の直属の上司になり、笑った顔を見たことのない人だった。73歳。

夢の中では、優しそうな奥様と、お嬢さんと一緒だった。



ま、そんな具合で神宮へ行き、参拝終えて、帰ろうと歩いていて、夢と同じく、


常務に声をかけられた。

広い境内に沢山の人がいる。観光客らしき集団もいる。

そんな中で、声をかけられ、まさに夢と同じことに洋平はぞっとし始めた。


常務はガマガエルのような顔をした人で、奥様は白髪ではあっても、美しく上品な人で、隣に並び微笑んでいるお嬢様も美しい人だった。


ありきたりに挨拶をして、ちらっと一度だけは振り向き、洋平は境内を出ようとしていた。



そして、部下8人の1人である独身の真田と出会う。


「あ、あ、部長! おはようございます!」


「おっ!真田君か!  参拝か!」


「いえ、ま、散歩してまして、、ついでに、参拝はしてきました。」


「そうか、帰るのか?」


「あ、はい、、部長は、、珍しいですね。僕は毎週、土日は、このあたりを歩いてます。」


「あ、わたしの趣味は、まあな、都内の寺社仏閣巡りくらいしかないからな。

あ、真田君、お茶でもどうだ? 朝飯は食べたのか?」


「あ、嬉しいです。まだ朝は食べてません。

境内のカフェに入ってみたくて、、」


「おっ!そうか、じゃあ、行こう!」



洋平は奢るのだ!夢の中では、真田にサンドイッチとコーヒーを奢っていた。


恐縮する真田に、気にするな!とさり気なく、ご馳走するのだ。



ケチな洋平は、この3年間、喫茶店もカフェも、入ったことはない。

山のような支払いばかりだから、倹約して暮らしてきた。

ケチとは違うと洋平は考えていたが、3年振りで口にした外でのコーヒーはひどく美味しかった。


粉のインスタントコーヒーとは違う。


真田は、


「僕、この辺りを土日は散歩します。よく広島常務に会います。奥様とお嬢様と3人で。」


「あ、そうなのか、、たった今しがた、常務にお会いした、奥様とお嬢様と三人だったな。」


「やっぱり、そうでしたか。


常務は、部長を誉めてました。僕に部長をよく見て見習うようにと。緻密で正確で、部長の仕事振りは安心出来ると、仰ってました。」


洋平は、常務に直接そのように褒められたことはないので、嬉しかった。真田の話が事実だとしたら、嬉しいことだった。


重ねて、


「常務のお嬢様は、出戻りらしいですね。

綺麗な人ですが、子供が出来ないので、離縁されたらしいです。46歳とかいってましたから、難しいですよね。綺麗な人ですけど、、ね。」


46歳なのか、、女性の年齢については洋平は、さっぱり分からない。化粧などしていたら、まず、年齢を推測すら出来ない。



洋平は、すでに女性には一切興味は無かった。毎日、毎日、同じものを食べて、働きに行き、帰ってからは週に2回は洗濯をして、おなじように、週に2回は掃除をする。


だいたい変化のない給与であるから、7割は借金払いだ。残り3割で、細々と生活している。

別れた妻に、妻の実家の墓代や車のローンは払ってほしいところだったが、話をする事すら、洋平はしたくなかった。


黙って、節約してコツコツ払っていたら、借金はいずれは終わるのだから。


夢は、真田と会って、カフェに行き、、あと、あとは、どうだったか、、そうだ、


安いスーパーに寄って、安くなっている野菜と肉を買って帰るのだ。



そうすると、常務から電話がかかってきて、


夕食を招待される。


洋平は着替えをしていそいそと出掛ける。


夢はそこで終わりだったはず。確かに、いそいそ、なぜかウキウキして、常務の家に向かうところで、夢は終わったはず。




そして、


あの買った夢の紙に書いてあった、、夢の通りに行動する、


するとハッピーが。


ラッキーが。




まさかのことだったが、


常務のお宅に伺うと、


常務は、娘と一緒になってくれないか?


娘は、以前から洋平を好いていた。


子供が出来なくて離縁された娘だが、洋平は54歳、

46歳の女性と再婚しても問題はないはずと、常務は力説して。


洋平は狐に抓まれたような感覚だったが。





それから半年後の春には、


洋平は、常務の一人娘の婿として、常務のお宅に迎えいれられた。


社内では大騒ぎになり、



地味で目立たなかった洋平は一気に、次期重役候補になったようだった。



千円で買った夢。


千円で美しい女性ロボットから買った夢は現実となったようだった。


真面目で律儀な洋平は、あの夢売りロボットを探しているが、未だにみつからないでいる。






         (終わり)